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エリザベス洋装店のブログ

ロバートフロストの<牧場>by 皇后美智子様

<世界名作選>の編集者は、悲しく心の沈む<絶望>の詩とともに、こうした心の踊る喜びの歌を、その選に入れるのを忘れてはいませんでした。ロバートフロストの<牧場>という詩は私にそうした喜びを与えてくれた詩のひとつでした。短い詩なので詠んでみます。<牧場>牧場の泉を掃除しに行ってくるよ。ちょっと落ち葉を掻き退けるだけだ。(でも水が澄むまで見てるかもしれない)すぐ帰ってくるんだからー君もきたまへ。子牛を捕まえに行ってくるよ。母牛(おや)のそばに立っているんだがまだ赤ん坊で母牛(おや)が舌でなめるとよろけるんだよ。すぐに帰ってくるんだからー君もきたまへ.この詩のどこに、喜びの源があるのか、私に十分説明することはできません。勿論その語の内容が、とても感じの良いものなのですが、この詩の用語の中にも、いくつかの秘密が隠れているようです。どれも快い想像を起こさせる<牧場><泉><落ち葉><水が澄む>などの言葉、そして<すぐ帰ってくるんだからー君もきたまへ>という、一節ごとの繰り返し。この詩を読んでから、七、八年後、私はこの詩に大学の図書館でもう一度めぐり合うことになります。米詩の詩歌集(アンソロジー)の中にでもあったのでしょうか。この度は原語の英語によるものでした。この詩を、どこかで読んだことのある、と思った時、二つの節の最終行の繰り返しが、記憶の中の日本語の詩と、ぴったりと重なったのです。<すぐ帰ってくるんだからー君もきたまへ>。この時初めて名前を知ったバーモントの詩人が、ページの中から呼びかけてきているようでした。

本から得た<喜び>by 皇后美智子さま

本から得た<喜び>についても。ここで是非お話をさせていただきたいと思います。確かに、世の中に様々な悲しみのあることを知ることは、時に私の心を重くし、暗く沈ませました。しかし子供は不思議なバランスのとり方をするもので、こうして少しずつ、本の中で世の中の悲しみに触れていったと同じころ、私は同じく本の中に、大きな喜びも見出していったのです。この喜びは、心が生き生きと躍動し、生きていることへの感謝が湧き上がってくるような、快い感覚とでも表現したらよいでしょうか。初めてこの意識を持ったのは、東京から来た父のかばんに入っていた小型の本の中に、一首の歌をみつけた時でした。それは春の到来を告げる美しい歌で、日本の五七五七七の定型で書かれていました。その一首を繰り返し心の中で詠んでいると、古来から日本人が愛し、定型としたリズムの快さの中で、言葉がキラキラと光って喜んでいるように思われました。詩が人の心に与える喜びと効用を私はこの時初めて知ったのです。先に私は本から与えられた<根っこ>のことをお話しいたしましたが、今ここで述べた<喜び>は、これから先に触れる<想像力>とともに、私には自分の心を高みに飛ばす、強い<翼>のように感じられました。