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エリザベス洋装店のブログ

人間の悲しみ、喜びに深く触れる by 皇后美智子さま

英語で読むとさらに掃除(クリーン)、落ち葉(リーヴス)、澄む(クリアー)、なめる(リック)、子牛(リトルカーフ)など、L音の重なりが快く思われました。しかし、こうしたことはともかくとしてこの原文を読んで私が心から感服したのは、私が買って読んだ阿部知二の日本語訳の見事さでした。この<世界名作選>を編集するとき、作品を選ぶ苦心とともに、日本語の役の苦心があった、と山本有三は、その序文に帰しています。既刊の翻訳に全て目を通し、カルルブッセの<山のあなた>の詩を除く、すべての作品は、ことごとく新たな役者に依頼して新訳を得、また同じ役者の場合にも、さらに良い訳を得るために加筆を求めたといいます。私がこの本を読んだころ、日本はすでに英語を敵国語とし、その教育を禁止していました。戦場に赴く額とも携帯する本にも、様々な制約があったと後に聞きました。子供の私自身、英米は敵だとはっきりと思っておりました。フロストやブレイクの詩も、もしこうした国の詩だと意識していたら、何らかの偏見を持って読んでいたかもしれません。世界情勢の不安定であった1930年代、40年代に、子供たちのために、広く世界の文学を読ませたいと願った編集者があったことは当時これらの本を手にすることのできた日本の子供たちにとり、幸いなことでした。この本を作った人々は、子供たちが、まず美しいものに触れ、また人間の悲しみ喜びに深く触れつつ、様々にものを思って過ごしてほしいと長ってくれたのでしょう。ちなみにこの名作選の最初の数ページには日本や世界の絵画、彫刻の写真が、白黒ではありますが乗っていました。とうじわたしはまだおさなく、こうした編集者の願いをどれだけ十分に受け止めていたかはわかりません。しかし、少なくとも国が戦っていたあの暗い日々のさなかに、これらの本は国境による区別なく、人々の生きる姿そのものを私に垣間見させ自分とは異なる環境下にある人々に対する想像を引き起こしてくれました。数冊の本と、ほんと、本を私に手渡してくれた父の愛情のおかげで、私もまた、世界の屋根の上にぷっかりと、楽しく本を読むあのIBBY<世界児童図書評議会>のポスターの少年の分身でいられたのです。