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エリザベス洋装店のブログ

仙境異聞 by 平田篤胤 2.

屋代翁は繰り返し言われた。私はうなずきながら、またこう思った。こちらの世の中の様子も以前とかなり変わってきている。昔は全く秘密にされていた書物や物事も、今では公になったものが多く、知りえなかった神代の道のこまごまとしたことも、次々と明らかになってきている。また諸外国の物事や様々な器具の類も、年とともに世に知られるようになってきた。思うに、これはすべて神のみ心であり、きっとあちらの世界のことも聞き知ることのできる、そんな気運が巡ってきた、ということではないだろうか。そんなことを考え考え歩いているうちに、いつの間にやら美成の家に行きついていた。幸い美成は家にいた。美成はその童子を呼び寄せて、屋代翁と私に引き合わせた。ところがその童子は、ただ我々の顔をじっと見つめたまま、あいさつの一つもしようとしなかった。さて、その童子、寅吉は、口元に微笑みを浮かべて、私の顔をしげしげ見つめていた。が、ついに押えかねたという様子で、<あなたは神様です>と何度か繰り返した。寅吉の口ぶりがあまりにも神妙で、私には何とも答えようがなかった。<あなたは神の道を信じ、学んでおられるでしょう>私がだまったままでいると、寅吉が話しかけてきた。<こちらは平田先生と言って、古学の神道を教授しておられる方だ>そばから美成がそう説明すると、寅吉は笑って答えた。<間違いなく、そうだと思った>この寅吉の返答に、早くも私は驚き、思わず問いかけた。<どうして私のことが分かったのか、話してくれないか。また私のように神の道を学ぶことは善い事か、それとも悪いことか、どちらであろうか、<何となく、神を信じておられる方に違いないと、ただそう心に浮かびました。それでそう申し上げたまでのことです。無論、神の道ほど、尊い道はございませんから、神の道を信じておられるのは、まことに善いことです>