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三島由紀夫byドナルドリチー4、 2015/04/30
まさにあの時、私たちはこの<死>について話していたのだが、私にはそこまで推測できなかった。ヘミングウェイの話が終わると、三島は話題を西郷隆盛に移した。西郷隆盛は十九世紀の陸軍大将であり、天皇を中心とする新体制を確立するための王政復古のクーデターを行い、新政府の樹立に貢献した人物である。しかしのちにその新政府も一部の幕藩官僚に牛耳られていることがわかり、革命は失敗に終わったと西郷は悟るのである。三島は、西郷が自決したこと、また忠実な友が西郷の介抱をしたのち自らも命を絶ったことをたたえた。西郷の行動は見事であり、美しいといった。私が肝心な部分を聞き逃さないようにーといっても、そこが肝心だったとわかるのは数か月たってからのことだが、-三島はさらに説明を加えた。自分も西郷と同様に、近代日本の合理主義的実用主義的、しかも懐柔的な姿勢がたまらなくいやだといった。<日本はね、死んでしまって、消えてしまったんですよ><でも本来の日本もまだどこかに残っているでしょう?>私は聞いてみたいが三島はきっぱりと首を横に振るのだった。<何とか日本を救う手だてはないのかな?>そう尋ねながら、私は微笑んでいたと思う。三島は私の背後にある鏡を見つめていった。<いや、もう救いようはないね>それから三島はこう言ったのである。<西郷は、最後の本物の侍だった>と。それは、脚本家が大団円のための伏線を巧みにはったり、また小説家が遠回しに結末をほのめかすようなものだった。このときー私は彼の言葉を文字道理しか受け取らなかった。<西郷は最後の侍>なのだとしか思わなかった。今考えれば、この言葉を発した本人こそ、最後の侍だったのだ。他の人間や他の作家がこの言葉を言ったのだとしたら、それは伏線でもなんでもなく、ただ無意識に出た言葉だと思うかもしれない。しかし、三島は違うのだ。自分の人生の登場人物を選択し、その役柄まできめた男である。つまりやがて来る十月、私が驚愕することはすでに仕組まれていたのである。そして元日に、その驚愕の叫びは、三島という人生劇中の私の最後のセリフとなった。

by 6014D | 2015-04-30 16:03 | コメント(0) | 未分類


三島由紀夫とドナルドリチー3、 2015/04/30
私たちは青年本人を目の前に話をしていたが、別にばつが悪くなったりはしなかった。日本ではさして珍しくもないことだったということもあるし、英語で話していたから青年にはわかるまいという安心感もあったからだろう。だが私が贈り物を受け取らないと知ると、三島は決まりが悪くなったようだった。この贈り物の受け取り主には、私がもってこいだと思っていたからだ。いったんは気まずい雰囲気になったが、青年がしぼりたてのオレンジジュースを飲んで先に帰った後は、また普通に戻ってしばらく話をした。それまで、三島と私が文学の話をすることはほとんどなかった。文学が私が三島から与えられた領域外だったからだ。もちろん以前にも話の成り行き上、話題が文学に触れることもあった。彼が生涯賞賛し続けたユイスマンス、聖セバスチャンに関する研究論文、ダヌンツィオの戯曲の翻訳、三島のお気に入りの現代小説<ハドリアヌス帝の回想>などが話に出たことはあった。それと私としては三島の作品中最高の出来だと思っている<仮面の告白>-これは本人には言わなかったが、実はこれが唯一の成功作品だとも思っていたーの話もあった。ところが、この日はヘミングウェイの話をし始めたのである。これはちょっとした驚きだった。というのも三島はヘミングウェイをかなり嫌っていたからだ。自分がヘミングウェイと似ているからこそ嫌いなのかもしれないし、または似ているけれども嫌いなのだろう。二人とも自意識の強い名文家であり、男らしさを追い求めたロマンティストであり、時代遅れの規範を支持した人間だった。しかしこの日本の作家が関心を抱いたのは、そのアメリカの作家が自殺したからだった。作家としてのヘミングウェイハス気になれなかったかもしれなくても三島は<だんだんと、あの人を尊敬するようになってきた>のである。それはヘミングウェイが<首尾一貫下>人間だったとわかり、見事だと感じたかららしい。そういえば、三島自身も知り合ってからずっと、三島という首尾一貫した人物を作り続けていた。新しく出来上がった三島は、昔の三島にはなかったものを身につけた存在だった。勝手の土盛りは、流ちょうな話しぶりに変化し、内気な青年は剣道の有段者になった。45キロ弱の虚弱な肉体は、ボディビルダーの肉体に変化し、しかも二児の父親になった。いずれにしても大した変貌ぶりだが、本当に首尾一貫した人間になるには、最後に死が必要であった。

by 6014D | 2015-04-30 15:58 | コメント(0) | 未分類


三島由紀夫とドナルドリチー2、 2015/04/23
だが、三島にはよくわかっていなかったのだ。もうかれこれ二十年近くの付き合いになるのに、である。それは三島が人の性格になど関心がないからだ。性格は重要ではない。彼にとって重要なのは、その人物が生涯を通してどういう役を演じているかなのだ。三島には自分の演ずべき役が決まっている。本当の自分とか、本当の感情などは、その役柄とはほとんど無縁のことである。例えば川端康成は年上の後援者であり、いろいろと便宜を図ってくれるという役割であり、<禁色>で二人の関係がゆがんで伝えられてもまったく傷ついたりはしない役柄になっている。ドナルドキーンは一流の評論家で、その関心は三島の作品面だけで、私生活にはかかわらないという役柄になっている。一方、私とその他数名は、私生活でのみ役に立つ人間であって、彼の作品についてどんな意見をもとうが、三島はまじめには受け取らないのである。私が例の青年の件を断ると、三島は動揺した。渋い顔で、鏡に映った自分の姿を見た。三島という英雄の親友という、私が演ずべき役からは外れた態度をとったからだ。<あの子はとってもまじめな子なんだ>と、真剣な表情で三島が言う。私は笑ったが、ほほえみは帰ってこなかった。三島は時折、滑稽になるほど意地悪くなる時が、ユーモアの感覚だけは持ち合わせてはいなかった。たいていの日本人には、多少滑稽な部分があるのに、三島にはほとんどない。だから彼が大声で笑っても、笑いが他人に伝染することはない。なぜなら、三島の笑は面白いことを表すためのものであって、心の底から笑っているわけではないからだ。

by 6014D | 2015-04-23 16:39 | コメント(0) | 未分類


三島由紀夫とドナルドリチー1、 2015/04/23
三島がなくなる年の夏、私は彼と頻繁にあった。実は三島の友人たちは皆そうで、この1970ねんのなつにはみしまによくあっていた。それはかれがそれまでよりもひんぱんにでんわをかけたり、てがみをかいたり、わたしたちとせっしょくしようとしたからだ。彼は遠い所へ行くつもりだった。そして二度と会えないことを知っていた。しかし、私たちはそんなことを知る由もなかった。夏も終わりのある日、三島が電話をかけてきて、東京ヒルトンホテルで会わないかと言ってきた。三島の好きなホテルである。あそこだったら執筆やその他いろいろな目的のため、誰にも気づかれず部屋を予約できるらしい。行ってみると三島は一人でなく、青年を連れてきていた。面識はなかったがタイプとしてはしっている。まだ若く、弱弱しい。おそらく文学青年だろう。若いころの三島にそっくりだ。ただし、今では三島は援助する側に回っている。鏡張りのバーに座って話を聞いているうちに、この青年はフランス文学専攻で、私への贈り物だということがわかってきた。私がパトロンになって、この青年を引き受けてほしいという。三島がこの話をしている間、青年はおとなしくうつむき、じっと手を握りしめていた。私は笑っていった。<由紀夫、それは無理だよ。君だってわかっているでしょう。もし贈り物をしたいというなら、君が援助をしているもう一方のタイプじゃないと、、、ね>

by 6014D | 2015-04-23 16:12 | コメント(0) | 未分類


1961年の出来事とヒット曲 2015/04/23
<世相>ジョンFケネディが米国大統領に当選。ケネディとフルシチョフによるウィーン会議実現。米国、キューバと国交断絶。公民権運動を南部に広めるための<フリーダムライド>運動広まる。ガガーリンを乗せた世界初のソ連有人宇宙衛星ヴォストーク一号が宇宙へ。東ドイツが東西ベルリンの境界を封鎖。<音楽>ボブディランがフォークアーティストとしてメジャーレーベル(コロンビア)と契約。フィルスペクターがレスターシルとフィレスレーベルを設立。映画<若さでぶつかれ>のヒットでクリフリチャードが世界的スターに。テレビ番組<夢で逢いましょう><シャボン玉ホリデイ>がスタート。加山雄三の<若大将シリーズ>が始まる。<1961年の代表作>Joan Baez<愛の喜び>,Elvis Presley,<Blue Hawaii>,Sam Cooke<Cupid>,Sylvia Telles<Dindi>,Carla Thomas<Gee Whiz>,The Ⅰmpressions<Gypsy Woman>,Ernie K-Doe<Mother Ⅰn Law>,The Highwaymen<Michael>,Henry Mancini & His Orchestra<Moon River>,The Marveletts<Please Mr,Postman>,Chubby Checker<Pony Time>,Del Shannon<Runaway>,Ben E,King<SpanishHarlem><Stand by me>,The Tokens<The LION Sleeps Tonight>Ricky Nelson<Traverin’Man> The Shirelles<Will You love Me Tomorrow?>Bill Evans Trio<Sunday At the Ⅴillage Ⅴanguard>,村田英雄<王将>、フランク永井<君恋し>、クレージーキャッツ<すーだら節>、橋幸雄<南海の美少女>,弘田三枝子<子供じゃないの>

by 6014D | 2015-04-23 15:41 | コメント(0) | 未分類



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